この記事の要約
- 高齢者講習は70歳以上の免許更新に必須で、内容は年齢と違反歴で大きく変わる
- 講習の本質は「合否」ではなく、自分の衰えを自覚させる設計にある
- 75歳以上は認知機能検査・運転技能検査が追加され、実質的な選別が始まっている
- 予約難・内容の限界はあるが、正しく理解すれば事故リスクを下げるヒントは多い
高齢者講習の内容を知らないまま更新すると損する理由
「高齢者講習って、結局なにをやらされるの?」
更新ハガキを見た瞬間、多くの人がここで思考停止します。
よく分からないまま予約し、よく分からないまま終わり、「まぁ通ったからいいか」で帰る。
実はこれ、一番危ないパターンです。
なぜなら高齢者講習は、落とすための試験ではなく、運転を続けていいかを自分自身に突きつける場だからです。
なぜ高齢者講習は「意味がない」と言われがちなのか?
結論から言うと、講習の目的と受け手の期待がズレているからです。
多くの人は「試験」だと思って来ますが、制度設計はまったく違います。
- 講習は合否判定がない
- 点数で落とされる仕組みではない
- あくまで「気づかせる」ための構成
警察庁交通局が2024年に公表した制度説明でも、「加齢による身体・認知機能の変化を本人に自覚させ、安全な運転行動につなげること」が目的だと明記されています
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seniordriver/index.html
2024年3月発表・警察庁交通局
つまり、厳しいテストを想像して行くと肩透かしを食らう。
その結果「意味がない」という感想になるわけです。
高齢者講習では具体的に何をするのか?
ここで一度、内容を正確に整理します。
70〜74歳と75歳以上では、中身がまったく違います。
- 座学講義(加齢による事故リスク、最新の交通ルール)
- 運転適性検査(視力・動体視力・反応時間)
- 実車指導(普通免許保有者のみ)
70〜74歳の場合、これが基本セットです。
東京都内の指定教習所案内でも同様の構成が示されています
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/koshu/koreisha.html
2025年1月更新・警視庁交通部
ポイントは、実車指導が「評価」ではなく「指摘」で終わること。
ブレーキが遅くても、S字で膨らんでも、落第はありません。
ただし、ここで指摘された内容こそが本当の核心です。
75歳以上で一気に空気が変わる理由は?
75歳以上になると、講習は別物になります。
最大の違いは、認知機能検査の存在です。
- 記憶力テスト(イラスト記憶)
- 判断力テスト(時間・位置の把握)
- 結果は3段階評価
この検査は、免許更新と完全に連動しています。
警視庁の公式説明では「認知症のおそれあり」と判定された場合、医師の診断書がなければ更新不可とされています
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/menkyo/koshu/ninchikensa.html
2024年12月・警視庁
さらに、過去3年以内に一定の違反がある人は、運転技能検査が追加されます。
- 一時停止
- 信号判断
- 右左折
- 車庫入れ
ここで初めて「不合格」が発生します。
2022年の道路交通法改正で導入された、実質的なふるい分けです
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/soshiki/55/koureisha-ginoukensa.html
2023年4月・広島県警察本部
講習の費用と予約が想像以上に重い現実
内容以上に多くの人がつまずくのが、予約と費用です。
- 70〜74歳:6,000〜8,000円前後
- 75歳以上:認知機能検査+講習で8,000円超
- 技能検査が入ると1万円を超えることも
しかも問題は金額よりも「空きがない」こと。
JAFが2024年に行った調査でも、都市部では2〜3か月待ちが常態化していると報告されています
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/elderly
2024年10月・JAF交通安全環境研究所
更新期限を過ぎれば免許は失効。
これは本当に起きています。
実際に受けた人は何を感じているのか?
X上の体験談を追うと、評価は二極化しています。
- 自分の反応の遅さに初めて気づいた
- 夜間視力が想像以上に落ちていた
- 逆に内容が優しすぎて不安になった
こうした声は2025年現在も増え続けています。
制度の効果は事故証明ではなく、本人の自覚度に表れる。
これは警察庁関係者のインタビューでも語られています
https://www.sompo-direct.co.jp/otona/traffic-safety/koreisha.html
2024年8月・損保ジャパン安全運転研究所コメント引用
高齢者講習を「意味あるもの」に変える考え方とは?
結論はシンプルです。
講習を「免許をもらうイベント」だと思わないこと。
- 指摘された点を家族と書き出す
- 夜間・雨天の運転を減らす
- サポートカー限定免許を検討する
講習はゴールではなく、分岐点です。
続けるか、減らすか、やめるか。
その判断材料を集める場だと考えると、見え方は一気に変わります。
FAQ
Q:高齢者講習は落ちることがありますか?
A:70〜74歳の高齢者講習自体に合否はありません。受講すれば修了証が発行されます。ただし75歳以上で実施される運転技能検査は合否判定があり、不合格の場合は再検査が必要です。講習と検査は制度上まったく別物なので混同しないことが重要です。
Q:高齢者講習を受けないと免許更新はできませんか?
A:できません。高齢者講習修了証がなければ更新手続き自体が進みません。更新期限を過ぎると免許は失効します。特例措置はなく、病気や予約難も理由にはならないため、ハガキ到着後すぐの予約が必須です。
Q:75歳以上の認知機能検査は難しいですか?
A:一般的には難易度は高くありません。ただし普段から物忘れが多い人や緊張しやすい人は影響を受けやすいです。検査は知識ではなく状態を見るものなので、対策よりも体調管理と落ち着いた受検が重要です。
Q:運転技能検査で不合格になるとどうなりますか?
A:その場で免許取消にはなりません。再検査を受けることで再挑戦できます。ただし更新期限までに合格できなければ免許は失効します。検査内容は基本操作が中心なので、事前に教習所での練習が有効です。
Q:高齢者講習を受けたら事故は減りますか?
A:事故率の大幅な低下を示す明確な統計はまだ限定的です。ただし講習後に運転頻度を下げたり、夜間運転を控える人が増える傾向は確認されています。講習の効果は行動変化に表れると考えるのが現実的です。

